Spazieren mit Möwen ~北ドイツお散歩紀行~ 第6回

北ドイツはキール大学に留学中の筆者が、キールでの学生生活についてリポート!

3か月ほどもある長い夏休みが終わって、キール大学ではやっと新学期が始まりました。というわけで、今回のSpazieren mit Möwenは、お散歩をしばしお休みして、私の通うキール大学の日常をご紹介したいと思います。

クリスティアン・アルブレヒト大学(キール大学)は、キールの人口の約1割、26000人の学生を擁する総合大学。キールがデンマークの領内であった1665年以来の歴史を誇ります。私は哲学部哲学科に聴講生として在籍し、ドイツ人学生たちに混じって講義やゼミナーを受けています。

 

 ドイツの大学と日本の大学の一番の違いは、「1限、2限…」の有無。ここでは、既定の時限も昼休みもありません。8時~10時、10時~12時、12時~14時と授業が連続してしまうこともしばしば。「教室移動はどうするの…?」と気になった方、大丈夫です。Academische Viertelstunde(アカデミッシェ・フィアテルシュトゥンデ)という、定められた時間よりも15分遅れて始まり、15分早く終わるという習慣により、むしろ日本の大学にいるよりも余裕をもって移動することができます。広大で起伏に富んだ敷地を持つキール大学では、講義棟間の移動にバスを使うこともしばしば。Viertelstundeに走るバスは、ラッシュ時の中央線と見まごうばかりの混雑具合です。おそらく、キール市内でいちばん人口密度が高いのは、このバスの中なのでは…。

 ドイツの大学では、基本的に教授(Professor)しか講義をすることができません。キール大学哲学科の教授陣は、哲学研究者として思想を説明する講義をなさるだけでなく、自ら学生たちに哲学的な問いを投げかけつつ、ほとんど板書をせずに90分間話し続けます。つまり、ドイツ語ネイティヴでない私にはたいへん難しい。そのうえ、こちらの学生たちは大学に入学するときにはすでに、自分の専攻(になるであろう)分野についてある程度勉強してきています。本で読んだり、日本で学んできたりした知識はあっという間に置いてけぼりに…。リンゴをかじったりノートに小さな落書きをしたりしながら余裕で講義を聴くドイツ人たちを横目に、私は毎日必死です。また、講義を受けていて感じるのは、学生たちがとても頻繁に発言するということ。教授の話に一区切りつくたびに、講堂のあちらこちらでにょきにょきと人差し指が挙がります(ドイツの学生は、手のひらを開いて相手の側へ向ける挙手をしません)。教授の話に反論するときも躊躇はありません。多少無理のある論展開になろうと、自分の意見の正しさを認めてもらおうと頑張ります。ときにユーモアある笑いをとろうとすることも。講義が終わると、学生たちは拍手の代わりに机を軽くたたいて教授に感謝を伝えます。

 私は今学期、2つのおおきなゼミナー(参加者50人程度)に参加しているのですが、発言回数や内容が単位に反映されることもあり、ここでは学生はさらに活発に。議論の流れをぶった切ってもお構いなしに、わりかし好き勝手に話す人が多いような印象です。議論による一つの結論を求めないため、みんなの発言を丸ごと包んで、ゼミナーはきちんと進みます。

 

そうそう、履修登録は「テストの登録」という形で行われます。人数の多いゼミナーや出席表の回ってくる少数の講義を除いては、基本的に講義の出席は自由ですし、途中で履修を取りやめるのも簡単。

哲学科の学生を見守るカント。学科の遠足やイベントの時には一緒についてくるらしい…。
哲学科の学生を見守るカント。学科の遠足やイベントの時には一緒についてくるらしい…。

われらが哲学科には比較的個性的な学生が集まっているようです。金髪を長い見事なドレッドヘアにした女の子や、黒髪をピシッと分け、クラシカルな服装をした男子学生、冬になるまで靴を履かないヒッピーなどなど。ですが、全体的にキール大学の学生は、地味。女子学生も大半はすっぴんで、いつでもだれでもスキニージーンズをはいて、実用重視のJack Wolfskinでしっかり防寒しているイメージです。大学は勉強をするところだからおしゃれする必要はない、という気負いのなさ。時折、いつも地味な格好をしていることに退屈したりもしますが、東京での学生生活に慣れた私には、彼らの気楽な姿勢は好ましく映ります。授業の外での学生たちの雰囲気は、日本とあまり変わりません。広々とした2つのメンザ(学生食堂)、カフェ(構内に4)、レストラン(これも構内に。何故。) 講義棟の廊下、講堂の階段、さらに夏は構内にある湖のほとりなど、いろんなところでおしゃべりしたり、勉強したり。メンザでは、あちこちのテーブルにばらまかれた大学新聞“Albrecht“やイベントのフライヤーを読んでいる人も多いです。勉強している彼らのノート(ルーズリーフではなく、切り取り線付きで2穴ファイルに綴じられるA4ノートが主流です) をこっそり覗き見ると、たいてい細かな字でびっしり書き込んであります。箇条書きにはせず、文章で講義の流れと自分の考えをしっかり残す人が多い様子。

メンザ。もう一つ、さらに大きなメンザもあります。
メンザ。もう一つ、さらに大きなメンザもあります。
巨大な図書館。入り口には”Manche leuchten, wenn man sie liest”というアンドレ・ジィドの言葉が。
巨大な図書館。入り口には”Manche leuchten, wenn man sie liest”というアンドレ・ジィドの言葉が。

いつもジーンズにすっぴんで勉学に励む(図書館はいつもほぼ満席) 彼らですが、実はパーティも大好き。新学期であり、夜が長くなってきたこの時期は、学部ごと、学科ごと、また全学むけの新学期パーティなど、たくさんのパーティが開催されます。面白いのは、メンザをダンスフロアにしてしまうこと。近隣の住民に迷惑をかけないためなのか何なのか、各自ヘッドフォンをして音楽を聴いて踊る、「ヘッドフォンパーティ」なんてものもあります。哲学科のパーティ、そろそろあるかな…。

大学の池。真冬になって湖面が凍ると、スケートをすることができます。
大学の池。真冬になって湖面が凍ると、スケートをすることができます。

今回は、私の在籍する大学の日常についてご紹介いたしました。私がいま見ているのはドイツでの学生生活のほんの一面ですが、日本の大学と似ている面、違う面、日々様々な発見があって興味深いです。もっと長くここで勉強できたらなぁ…と、残り3か月を切った留学生活を名残惜しんでいます。

 

 さて、来月にせまっているのは、そう、クリスマス!次回は、シュレスヴィヒ・ホルシュタインのWeihnachtsmarkt(クリスマスマーケット) レポートをお送りいたします。お楽しみに!

(文・堀川 夢)