番外編 『台湾人と』

男三人、台湾旅。そこにはガイドブックに載っている以上の物が待っていた。ただ飯がうまい、ただ物価が安い、それだけじゃない台湾はおもしろおかしく、変な出会いにあふれていた。

台湾。

 最近、日本から海外に旅行に行く人の中で人気が沸騰している一つである。運賃の安さ、物価の安さから大学生でも友達の旅行に台湾を選ぶ人はなかなかに多いのだ。そんなことで私も2016年の夏休み高校の同期の友達二人と行くことに。ちなみに台湾から帰ってきたときに後輩に台湾自慢をしようとしたら「いろんな人から聞いたからいいです。」と断られるくらいに台湾に行く人は多い。

 

 なので今回は夏に行った台湾の旅行記を書くのではあるけれど、台湾にどんな飯があってどんな観光スポットがあるかというのはよく知られているし、るるぶとかの方が明らかに強いので台湾で出くわしたおもしろき人々にスポットを当てつつ台湾を紹介。

 

 一緒に旅に行ったのは、ジュンイチ君とたけお君。私を含む三人とも別の大学に通っているが同じ県から東京に出てきたこともありよく呑んだりする仲である。ジュンイチ君は前日に泥酔して転んで手の甲を折るという状態で登場したので、成田空港の蕎麦屋のおばちゃんに心配される始末である。その後、荷物検査で100mlを超える洗顔類を持ち込みまくり全没収される始末である。どう考えても海外に行くコンディションではない。

 

 台湾で芸術品の展示といえばココというのがある。国立故宮博物院である。収蔵品の数が半端ではなく、なんやかんや合わせて60万点以上の文物があるのだ。故宮博物院に訪れたら見なければいけないものの中に、「翠玉白菜」と「肉形石」というものがある。簡単に言えば、鉱石で出来た超リアルな白菜の置物と豚の角煮の置物。その精巧さと厳粛な博物館に食い物が堂々と鎮座しているシュールさで世界中から見に来る人が後を絶たない人気展示なのだ。

 

どのガイドブックにも載っている名品ということもあり我々はわくわくしながら展示室に入った。けども異常に人が少ない。平日だったので混んでない、ラッキー!と思っていたら、そもそも白菜も角煮もない。案内をしている学芸員のお上品なおばさまに聞いてみた。

 

Now they are in America.

 

三人の目から明らかに光が消える。ちょうどアメリカの博物館に出張してしまっていたのだ。はっきり言って白菜と角煮以外そこまで我々としてはお目当ての物がなかったので、私が展示物を撮影していると、ジュンイチくんとたけお君が真顔でわざとさりげなく映り込んでくるというのを始め、三人とも博物館側からすると完全にいらない子達。

博物院にあった「職人はこれ本気で作ったのか?」シリーズ。ゆるすぎる。

 人気アクティビティの一つは占いである。地下鉄の龍山駅に直結している占い横丁には多くの占い師が軒を連ねている。日本語OKの占いも多くあるので日本人観光客にも大変にありがたい。しかしこの地下街やたらと薄暗く、そこら中でオジサンたちが寝ていたりとなかなかになかなかな雰囲気なのであまり女性だけで行くのはどうなのだろう…とも感じた。

 いかんせんたくさんの占いがあるのでどれがいいやら迷っていると占いの先生たちが流暢な日本語で客引きしてくるのだがその客引き文句の八割くらいが他の先生の悪口から始まる。客引きは熾烈なのだ。 

  最終的に選んで入ったのがきゃりーぱみゅぱみゅなど日本の有名人も数多く占った経験のある先生。お上品なマダムという雰囲気だ。三人とも占いは遊び半分で行ったのではあるがこれが恐ろしいくらいに当たる当たる。家族との関係や去年どの様なことがあったなど具体的に当ててくるのだ。占い恐るべし。ただジュンイチ君は性格を先生から言い当てられるときに、

「あなた…優柔不断でしょ。」

言われたのだが、私もたけお君もそしてジュンイチ君自身も彼のことをこれまでの付き合いの中で優柔不断と思ったことが無いくらいジュンイチ君はハッキリしている性格なのだ。

ジュンイチ君「いや…そうでもないです。」そして頷く私とたけお君。やはり占いは外れるものなのか…?

 

先生「あーそれはね運が良かったのよ。」


まあ、うん、うん…なるほど…そーいうことなのである

「鳥占い」の様子。私の番だけ鳥が全然仕事しようとしなかった。この状態から全く動かず。鳥になんかしたかなあ…

 もちろん台湾はグルメが充実。小籠包の名店が近くにあるということで中正紀念堂へ。ここは何の建物かというと誰もが世界史で一度は耳にする初代総統、蒋介石をたたえた施設なのだ。ちなみに中正とは蒋介石の本名である。

 近くの地下鉄の駅から出るとすさまじくにぎやかな声が。今日は祭りかなんかだろうかと見てみると、


デモである。


 日本に帰ってから調べると、この日は年金改革に対するデモが行われており12万人が集まっていたとか。台湾の熱さがうかがえる。

 ふと横を見ると、ジュンイチ君の表情に怒りが見える。彼にもこのデモの熱さやエネルギーに呼応するようなものがあるのだろうか…

 そんなはずもなく彼は単に腹が減ってさっさと小籠包を食いに行きたいのに道が通れないのでイライラしていただけである。

 

 小籠包を食べた後は中正紀念堂の中を見学。ここには蒋介石の歩みや蒋介石が実際に着用していた軍服などが展示されている。日本語での解説も充実しており、蒋介石がいかに偉大な人物であったかを我々は知ったのである。

 そして展示の中でひときわ目を引くのが6mを超える大きさの蒋介石座像である。そばには憲兵さんがほぼ不動で警備をしており、厳粛な雰囲気である。


蒋介石の笑顔はこの国を見守っているように思えた。そんな彼の目には今何が映っているのだろう。ふと彼の目線の先を見てみる。

 

ドラえもんだった。


 台湾には猫好きにはたまらない場所がある。台湾の猫村こと、ホウトン(猴硐)である。台湾の中心部である台北からは電車で50分ほど離れたところにあるのどかな村である。

 この村はそう、

猫パラダイスなのだ。

 しかもだいぶ人になれているので、触れるのはもちろんこんな距離で写真をとってもほとんど逃げないのだ。男3人であるがかなりの癒しとなった場所である。

 しかし猫ばかりがちやほやされる村であるからかどうかは知らないがこの村の犬は大概こんな感じになっている。

「もうええって…」感がすごい。

 ちなみにこの後、台湾の超人気スポット、九份にも赴いたのであるがあまりの人の多さと雨のせいで3人で撮った写真の誰一人として楽しそうな顔をしてなかったので割愛。たけお君に至っては尻子玉抜かれたみたいな顔になっていた。こんなに楽しくなさそうな台湾の写真はないのではないかというレベルである。しかしもちろん九份自体はステキな場所である。

 

 台湾で最も印象深かった出会いがある。それは3人でホテル近くの飯屋で一杯やろうとしていた時に店にたまたま入ってきたヤンさんという台湾人の中年のおじさんだ。我々が日本人と知るやいなや驚くほど流暢な日本語で話しかけてきてくれた。

 なんとヤンさんは聞けば、沖縄のホテルで働いていた経験があるのだという。そしていろいろ打ち解けて喋っているとヤンさんは言い出したのである。

 

「これ全部おごるよ!!!」

 

 そういうと彼は、我々が食べていたものだけでなくさらに追加注文をし、店にあるビールをほぼすべておごってくれたのだ。とてもありがたく、こういう何があるか分からないのが旅の醍醐味なのかなあと思いつつヤンさんと様々な話に花を咲かせた。ヤンさんは、台湾の政治のこと、他の国との関係のこと、日本のスケベ文化が大好きなことなどいろいろなことを話してくれた。また、奥さんの写真を見せてくれたがとても美人である。

 そしてなんとこっちが申し訳なくなるくらい寛大なヤンさんはわざわざ車で我々をホテルまで送ってくれたのである。しかも誰もが知っているような高級車に乗っているのだ。ヤンさんは車の窓から、街の知り合いであろう人々に声をかけていた。彼の人望もうかがえる。

 

 そんな台湾の人の優しさ、そして台湾の勝ち組を知った夜であったのだ。

 

(文・三木建五郎)(題字、イラスト・栗)