Spazieren mit Möwen〜北ドイツお散歩紀行〜 第4回

北ドイツはキールに留学中の筆者が知られざる同地の魅力をお伝えする”Spazieren mit Möwen“。近づく秋の足音に耳を澄ませながら、キール旧市街をのんびり歩きます。

北ドイツはキールに留学中の筆者がシュレスヴィヒ=ホルシュタイン州を中心に北ドイツの魅力をお伝えする”Spazieren mit Möwen“。今回で第4回目となる連載ですが、わたくし、気づいてしまったのです。ドイツ語で「カモメとお散歩」という意味のタイトルで連載しているくせに、ちっともキールの街をお散歩していないことに…。

 というわけで今回は、キール旧市街、秋のお散歩レポートをお送りしたいと思います。

 

かつてシュレスヴィヒ公の城の庭であった公園、Schloßgarten(シュロスガーテン)から歩き始めましょう。なだらかな丘のような地形で見晴らしのいいこの公園には、いつも季節の花がきれいに手入れされて咲いています。最近ではゲーム「ポケモンGO」をするために、スマホ片手に人々が集まっています。

 

 丘を登りきったところには、Zoologisches Museum(動物学博物館)*が。動物園のないキールには、その代わりに、動物・鳥類・爬虫類・海洋生物の標本やはく製、また、地質・環境学的な資料を網羅的に展示している博物館があるのです。サンルームのように白い吹き抜けの空間に、剥製とホルマリン漬け、骨格標本たちがずらりと並ぶ展示室。中央に鎮座するシロナガスクジラの骨格や、深海コーナーの主のようなダイオウイカは壮観ではありますが、たくさんの、かつて生きていたものたちがその動きを止め、永遠にポーズを取り続けている様子は、静けさとかすかなさびしさに包まれています。

 

 

博物館で少し感傷的になった気分を吹き飛ばすように、港沿いの道、Kiellinie (キールリニー)を歩きます。桟橋がいくつもかかり、ヨットクラブのガレージが立ち並ぶKiellinieは、市民の憩いの場であり、絶好のランニングスポット・犬の散歩スポットであり、また、Kieler Woche(連載第2回参照)におけるメイン会場の一つでもあります。私は、Landtag(州議会)の前にある石段に座り込んで読書や勉強をするのがお気に入り。

 カフェやレストラン、フィッシュサンドの移動販売車が数軒あり、到着したり出発したりする船たちを眺めながらのんびり過ごすことのできるKiellinie。カモメたちと一緒にお散歩するならここですよ。

 

 

さて、海を離れて街へ戻りましょう。かつてシュレスヴィヒ公の城があったところの周辺は旧市街です。といっても、第二次世界大戦でいったん壊滅させられた街がかつての面影を残しているわけもなく、旧市街らしさといえば古い石畳と丸い広場の地形くらい。いちばん旧市街らしい雰囲気のDannischstraßeには、市立ギャラリーや、落ち着いた印象のカフェ、ブティックが並びます。13世紀以来の歴史を持つ元修道院で今ではこちらもギャラリーとして使われている、Kieler Klosterもここにあります。

 

 

 Alte Markt(旧市場)を見守るように建っているのが、聖ニコライ教会*。海の守護聖人の名前を戴くこの教会は、さざ波のような青いステンドグラスと、雪の結晶のモティーフが使われた十字架が特徴的です。北ドイツの教会はどこもがっしりと堅牢な造りで、ドイツの教会ときいて一般に想像される豪華さはありません。しかし、海の男たちの安全を願うために建てられた教会らしく、一歩踏み入れるとここは静謐な青い光を湛えています。このエリアは、夕方6時になると、聖ニコライ教会とKieler Kloster、教会と修道院の鐘の音が鳴り響きます。

 

 

Alte MarktからHolsten商店街を抜けて、丘のほうへ向かいましょう。旧市庁舎(といっても現役)とオペラハウスの前には、大小二つの湖、Kleiner Kiel(クライナーキール)があります。ガンの群れや白鳥の親子のすみかでもあるこの湖は、お散歩にちょうどいい大きさで、しかもたいへん美しい。二つの湖の間にかかる橋から旧市庁舎を臨むと、空を縦横に走る飛行機雲が。ちなみに、この湖の裏手には、Hiroshima Parkという公園があり、毎年8月6日にはそこで日本の原爆犠牲者を追悼する会が開かれています。

 

 

最後に、私のとっておきの散歩道をご紹介します。Kleiner Kielに沿って走り、2つの大きな道路、BerrgstraßeとBrunswikerstraßeを結ぶ、Philosophengang(フィロゾーフェンガング: 哲学者の散歩道)です。なんということはない小路なのですが、両側から、まるでトトロの森の入り口のように木々が生い茂っていたり、花も実も白い不思議な花が蔦の先に咲いていたり。真夏の暑い時間帯でもほかの道よりも涼しく、ひとりこっそり考え事をしながらゆっくり歩くのにぴったりなのです。

 

 

秋晴れ(というか残暑…?) のキールを、海側を中心にお散歩した今回のレポート、いかがでしたか? 陽がどんどん短くなり、これから冬に向かうキール。カモメたちの一部は越冬のため、まもなく南へ渡ります。

 

*Zoologisches Museum Hegewischstraße 3

  入場料 大人: €4 子供・学生: €2 生物学部生: 無料

*聖ニコライ教会  Alter Markt

 見学可能時間 月~土:10時~18時 日 10時~18時(礼拝の時間を除く) 

 

 

(文・堀川 夢)