Spazieren mit Möwen 〜北ドイツお散歩紀行〜 第3回

ドイツ海軍の歴史と世界大戦の記憶を今に伝える記念碑に、キールの代名詞ともいえる潜水艦...キール市内から船で1時間半の場所にあるビーチを散策。

 

キール中央駅から船に揺られて1時間半。キール・フィヨルドの入り口に、美しい砂浜の街、ラブー(Laboe)はあります。海水浴をするにはずいぶん肌寒くなってしまった北ドイツですが、海沿いのお散歩には絶好のシーズン。北ドイツお散歩レポート“Spazieren mit Möwen”、第3回目は、ラブーのビーチと、そこにある記念碑・博物館をご紹介いたします。船を降り、砂浜沿いに15分ほど歩くと、高くそびえるレンガの塔と、巨大な潜水艦が姿を現します。ラブー海軍記念碑と、博物館船です。キールがそもそも世界大戦時の海軍拠点であったことは以前にもお伝えしましたが、爆撃による破壊と再建の結果、当時の面影は街並みにはほとんど残っておりません。ですが、ここラブーの記念碑では、ドイツ連邦海軍(1815~)から現在のドイツ海軍に至るまでの展示とたくさんの模型船、プリンツ・オイゲンのスクリュー(第二次世界大戦を戦い抜いた後アメリカのビキニ環礁での水爆実験の実験台にされ、スクリューだけがドイツへ帰還した)、さらには実際に使用されていた潜水艦、U995が、ドイツにおける海軍の歴史を伝えています。

 

 

またこの記念碑は戦没者追悼の碑でもあるため、2回の世界大戦で命を落としたすべての水夫と沈んでしまったすべての船を悼む展示と追悼ホールも併設されています。

 

戦争で沈んだすべての船の隻数と船影が”Sie starben für uns(彼らは我々のために死んだ)“という言葉とともに壁に刻まれています。

 

ヴァイキング船の船首を彷彿とさせる塔は72m、階段にして341段もの高さがあり、最上まで登ると、海抜85mの高さの展望台にたどり着きます。とおくキール・フィヨルドとバルト海を見渡して、振り返れば地平線まで畑の連なる大地。シュレスヴィヒ=ホルシュタイン州ならではの景観です。

 キール・フィヨルドを臨んで。

 

 

 バルト海へと海は広がります。

 

 

振り向けば、畑。

 

 

さて、展望台を降りて、潜水艦の中を探検してみましょう。ここにあるU995は、同型の船舶の中では現存する最後の1艘です。穏やかな浜辺に忽然とある異質な面構えの艦内には、内部の機構や船室がそのまま保存されています。たくさんのハンドル、操縦桿や発射装置、船員たちのベッド、鮮やかなブルーの機雷…。説明書きによると現役時には44~52人の船員が乗り込んでいたそうで、この狭い船内に大勢で乗り込み、深海にじっと潜みつつ、ときに魚雷の横で眠ることを思うと、息が詰まります。

 

博物館・記念碑の見学を終え、のんびりと埠頭まで戻ることにしましょう。ラブーの砂浜は有料と無料のエリアに分かれており、有料エリアにはヨーロッパのビーチにおなじみのKüstenkorb(籐や木でできた、庇付きの箱のような椅子)が並んでいます。この日は天気が不安定で気温も低く、海水浴をする人はいませんでしたが、無料エリアではカイトを飛ばしている家族、浜辺に座っておしゃべりするカップルなど、夏の終わりの海を楽しむ人々が多くみられました。また、ビーチ沿いの遊歩道にはお土産屋さんやレストランが点在し、少しひなびた田舎の観光地といった風情。8月になってもまだ紫陽花の咲いている、このあたりをお散歩するのもまた一興です。

 

夏至を過ぎて1か月半が過ぎ、陽の落ちるのも幾分早くなってきたキール。これから迎える長く暗い冬を前に、それでも港は光を受けて、いつもやさしく輝いています。

 

(文・堀川 夢)