外大生と巡る世界のことば【第6回】イタリア語編

外大生と巡る世界のことば、第6回はイタリア語である。グラッチェ。

外大生と巡る世界のことば【第6回】 イタリア語編   前回(第5回)はこちら

ゲスト:濱本夏綺さん(イタリア語科)

 

1. 自己紹介

 

東京外大2年の濱本夏綺です。大学では水泳部と短歌会に属し、そしてこのWonderful Wanderで記者をさせてもらっています。小さいころから本を読んだり書いたりすることが大好きで、「ことばの力」には特に深い思い入れを持っています。もっと世界中の人と話をしてみたい、世界中の人たちの考えをその人たちの言葉で読んでみたいという思いで、中学生の時から腰を据えて英語を勉強し始めましたが、イタリア語の魅力に憑りつかれてからは、専らイタリア語一筋です(笑)大学では、主専攻のイタリア語に加え、フランス語、ラテン語などロマンス諸語を中心に勉強しています。

 

加瀬:さて、番外編も終わり、今回からはいったん27言語に帰ってきたいと思います。夏綺さん、よろしくお願いします。ラオス語編に引き続き二回目となる記者さんへのインタビューになります。本記事をお読みの方は、ぜひ彼女の記事もチェックしてみてくださいね。では、今回はイタリア語編になります。

 

2. なぜイタリア語を専攻したのか

 

いつからイタリアが好きだったのか?

 

そのご質問には的確に答えることができません。少なくとも物心ついた時には、私はイタリアという国に惹かれていたように思います。きっかけはテレビでよくある旅番組です。特にBSでは深夜帯にイタリアの風景をただただ映し出す、というような番組がよくあり、そのような番組からイタリアの知識を吸収していつか必ずイタリアに行くんだと心に決めていました。

 

そしてイタリア語を学びたい、と決定的に思うようになった転機は高校1年のときです。それは小説「夢の中の夢」との出会いでした。この本はイタリア人作家アントニオ・タブッキによって書かれ、東京外大教授和田先生によって訳されたものです。幻想的でありながらレアリスムの入り混じるこの不思議なイタリア文学の虜になった私は、他のイタリア文学にも興味を持ち始め、またこの本を訳された和田先生が外大で教授をやっていることを知りました。イタリアは大好きだし、イタリア文学も最高に面白い。これはイタリア語をやるしかないと思ったわけです。

 

動機としてはまずイタリアそのもの、そして文学、それからイタリア語へ。このようにイタリア語そのものに興味を抱き始めるまでには多少の時間を要しましたが、今この大学・学部に所属していること、楽しんでイタリアにまつわる諸学問に取り組めていることは必然であったように思います。

 

加瀬:物心ついたころから惹かれていたとは、なんとも運命的ですね。イタリアもきっと夏綺さんのことを愛していると思いますよ。私などまさか自分が大学でスペイン語を専攻するなんて考えてもいませんでしたからね。こういう人間もいます。

 

3. イタリア語の魅力などについて語る

 

「イタリア語は歌を歌うための言語だ」ときにイタリア語はそのように言われることがあります。イタリア語の名詞は男性あるいは女性いずれかの性を持っていて、品質形容詞や指示形容詞は名詞の性や数に合わせて形を変えるのです。

 

この少女は美しい

Questa ragazza è bella.

 

これらの少女たちは美しい。

Queste ragazze sono belle.

 

このように語の最後には必ず母音がきて、その音は一致することが多いです。結果としてイタリア語の発音は大変明瞭で(特に私たち日本人にとっては)、性数一致によって普通の文章でも流れるようなリズムが生じます。イタリアの美しいオペラやカンツォーネはこうした土壌から生まれてきたのです。

 

さらに日本人がイタリア語を学ぶ魅力としては、イタリア語の母音は日本語に近く、抜群に発音がしやすいことだと思います。大げさに言って、巻き舌のRの発音さえできればイタリア語っぽく話せてしまうのです。一方でイタリア語が現在の形を成すまでに辿った歴史は奥深いです。イタリア語は実はまだ若い言語で、実際の言語統一がなされたのはイタリア王国成立の1861年以降であり、イタリアには多様な方言が残存しているのです。イタリア語がわかるためには表面的な言葉の理解ができる、話せるだけでなく、その言語の歴史や多様性についても正しい知識を持って学んでいかなければなりません。

 

美しく明瞭で勉強が始めやすい一方で、その言葉の海はとても奥深い、それがイタリア語の魅力だと私は思います。

 

加瀬:イタリア語は歌うための言語、なるほど確かにイタリアといえばオペラなどのイメージはありましたが、その背景が垣間見えました。上の例文をちょっと発音してみたんですけど、なかなか気持ちが良いですね。(基本的にローマ字をそのまま発音すれば大丈夫なので、皆さんも発音してみてください)また、イタリア語がまだ若い言語であるということも初耳でした。多様な方言というと…そういえばトスカナ語とか聞いたことがあります。

 

4. イタリア語を学ぶ上では、ここが難しい!

 

私は、何より巻き舌Rの発音ですね。巻き舌をしなければならない語科に伝わる秘伝技ですが「さっぽろらーめんとろろこんぶ」と言い続けると巻き舌ができるようになる、らしいです(笑)私もかれこれ一年練習していますが、最近やっとそれっぽく巻き舌ができるようになりました。しかしBuongiorno!のように間にrの発音がくるのであればまだしも、Romaのように最初に巻き舌が来てしまうとお手上げです。もっと精進しようと思います。巻き舌なんて簡単だよ!という人は発音はすぐにマスターできてしまうのではないでしょうか。ほかにイタリア語に独特の発音には、gliがあります。これは日本語にも英語にもない音です。コツは、日本語の「二」を発音するつもりで舌の中央部を硬口蓋に押し付けつつ、唇を左右に開いて「リ」と発音してみることです。これも少し練習をつめばすぐに出来るようになると思います。

 

文法も初めは取り組みやすいですが、当たり前に読解の難度は文章の硬度に比例してどんどん上がっていきます。イタリア語は日本語と同様に主語を省略できるので、長い文章中では主語を見失ってしまうこともあります。動詞の活用や名詞の性・数によく注意して読まなくてはなりません。

 

加瀬:巻き舌はスペイン語やロシア語などでも学習者を苦しめているようですね。

幸いなことに私は巻き舌ができるのですが、なぜできるのかと問われても答えられません。ただ、よく「舌が短いと巻き舌ができない」とかいいますが、どうもこれは間違いのようです。(なんか言語学の本で見ました)ちなみに私は舌が異常に長いです。練習してできるようになっている友人もたくさんいるので、少なくとも先天的なものではないと思います。なお、スペイン語科ではもっぱら「さっぽろらーめん」で、「とろろこんぶ」はついていませんでした。たぶん。

 

5. オススメの教材や勉強方法

 

イタリア語はまずそのリズミカルさを生かして耳から入ることが大切だと思います。たくさんリスニングをしたりイタリア人と話してみたり、NHKの教育番組を見てみたり、とにかくまずはその独特のリズムやイントネーションに耳をすませてみてください。また名詞に性がある言語にはよくあることですが、その名詞が女性であるか男性であるかの判別が難しいことがあります。イタリア語の場合はeで終わる動詞です。Mare(海)といえば女性っぽいなと思っても、il mare という男性名詞だったりします。しかしこういう問題も多聴で解決できると私は思っています。文章のリズムの中でその冠詞ごと覚えてしまうのです。単語帳とのにらめっこより、せっかく耳に気持ち良い言語ですから、まずは聞くことから初めてみてはどうでしょうか。

 

そんな耳から入るイタリア語にうってつけの参考書は

「耳が喜ぶイタリア語」(ジョヴァンニ・アモレッティ著、日伊学院)です。

付属のCDでイタリア語を聞きながら初級から中級に向かって幅広い内容を勉強できます。他にキクタンシリーズのイタリア語版もおすすめです。

 

また、私はイタリア語の曲をよく聞きます。Tiziano Ferroなどイタリアには素敵な歌手がたくさんいます。ディズニーやジブリのイタリア語版もおすすめです。私は去年イタリアに行ったときに、ジブリ作品のイタリア語版をいつくか入手し勉強に役立てました。イタリアに行く予定なんかないよ~という人は、youtubeなどで「作品名 italiano」で検索してみてはいかがでしょうか。テーマソングのイタリア語版などが見つかってこれも耳を慣らすのにうってつけです。

 

加瀬:耳から入る、まさに歌うための言語の学習方法という感じですね。実際、リスニングは発音の上達にも繋がりますから、どのような言語を学習するにしても効果的ですよね。私も学習用の音声教材以外にYoutubeなども利用して楽しく学習しています。特にディズニーソングは本当にいろいろな言語版のものが聴けるので重宝しております。今度イタリア語でも聴いてみますね。

 

6. 最後に

 

長くなりましたが、イタリア語を学ぶには、まずはイタリア語を好きになることが一番だと思います。私の大好きなイタリアの魅力が伝わり、少しでも多くの人がイタリアとイタリア語に興味を持ってくれたら幸いです。

 

Grazie mille! Arrivederci!

 

加瀬:夏綺さん、ありがとうございました。

 

ローマ・アヴェンティーノの丘にて(撮影:もちろん夏綺さん)

(文:加瀬 拓人)


「外大生と巡る世界のことば」過去の記事はこちら

第1回 スペイン語

第2回 タガログ語(フィリピン語)

第3回 ラオス語

第4回 サンスクリット語 前編

第5回 サンスクリット語 後編